今日は不思議な光景を見ました。 黒衣を着た人人が それぞれ薔薇の花を、一枝携えて歩いているのです。 笑うことも、怒ることも、泣くことも無く、ただ淡々と 歩みを進めているのです。 ああ、思い出しました。 あれは葬列です。 自らに手向ける弔い花を手にして、 一歩一歩 この世を去る日に向かって歩いているのです。 またひとり、目的地に到着したようです。 ずいぶんと早足でやってきたようですね。 そんなことしなくても たどりつく場所は一つだと言うのに 貴方の薔薇はまだ萎れていないのに そうかと思えばあちらでは 列から離れ立ち止まって 枯れかけた薔薇をどうにかして甦らせようとしています。 そんなことをしても 一度咲ききった花は必ず散ってしまうものなのに 私も薔薇を持って歩いています。 一歩、一歩止むことなく。 あちらへ到着したら 誰か一人でもいいから、薔薇の花 私に手向けてください。 |