Gerda Wegener 1914


ゲルダ・ウェグネルGerda Wegener(1885-1940)
デンマーク出身、1910年代〜30年代前半にかけてパリにてグラフィックアートの世界で活躍。
愛らしい絵柄で雑誌のファッション・プレート(現在のファッション写真にあたる)を手がけ、人気を博す。
史上初めて性転換手術を受け女性となったリリ・エルベ Lili Elbe(1886-1931)は彼女の夫である。
リリは女性となってからもゲルダと愛し合っていたが、国により離婚するよう命じられ、これに従った。

ゲルダはファッショナブルなイラストのみならず、エロティックなイラストも手がけている。
その多くは可憐な容姿の女同士の愛の営みであるが、これらはリリとの関係が影響しているのであろうか。
  
消え消えの燈火の蒼白い微光を浴びて
香の染みた 小蒲団(クッション)の上に坐つて、
イッポリートは あどけないその童心の幕を破つた
力強い数々の愛撫を うつとりと夢見てゐた。

  

―『イッポリートよ、可愛いひと、いい気持でせう。
解つたこと、いま。あんたの薔薇の初花の
神聖な肉の犠牲(いけにえ)、花を凋ませるやうな
荒々しい男の風に 献げることなど いらないわ
  
青々として きらきらと星の充ちた眼を お向けよ。
可愛くてたまらないその眼のために、神々しい
馨のひとよ。一番秘密の快楽の幕を開いて
わたし あんたを果てしのない夢の中に 睡り込ませるわ』


  

わたしたち それでは何か変なこと したのでせうか。
出来るなら、この恐しさ この不安 説明してよ、
あなたに「天使」と呼ばれると、わたし 怯えて顫えるわ、
それでも 自然と脣を あなたの方に差上げちゃうの。
  
そんな眼つきで見ないでよ、ねえあなた、わたしの恋びと、
たとへ あなたが仕組まれた陥穿(おとしあな)であつたとしても
それが わたしを地獄へ堕す基であらうと、
わたしの選んだお姉さま、わたし お姉さま恋するわ』


詩:ボードレール 「地獄に堕ちた女たち(デルフィーヌとイッポリート)」